洒落

 こうなったら意地でも履いてやる。わずか3週間前に買ったサンダルが、両足ともバンドの紐が切れて、左側は10cm中5cm、右側に至っては5mmくらいしか底とくっついていない。折角店頭で、底にイボイボが付いていて健康に良さそうなのを見つけたのに。その為に衝動的に300円余計に出費した。こんなことなら最初手に取った680円のにしておけば良かった。  これだけ紐が切れてバンドが飛行機の翼のように左右に羽を広げると、ジーパンの裾から十分はみ出て誰でも気がつくらしい。中国製ではないのと指摘されてよくよく見てみると、どこで作られたものか書いていない。買ったときに不用のものはすぐ捨てる癖がついているので、恐らく書かれていたものは捨てたのだろう。ただサンダルにはアルファベットで大きくMICHIKO LODONと書いてあり、その下にKOSINOとも書いてある。何となくどちらの名前も聞いたことがある。恐らく有名なデザイナーかブランドの名前だろう。こんな名前と永久に接点がない僕でも何となく記憶にある名前だ。もしその手のものなら、ホームセンターに花火と一緒にぶら下げられてはいないだろうし、1000円札でお釣りも来ないだろう。これがかの国の噂のコピーかと苦笑いしながら「安物買いの銭失い」としたり顔で助言してくれた常連客に神妙な顔を見せるしかなかった。  作る方も作る方だが、それを売る方も売る方だ。名前を挙げれば県内の人ならほとんど知っているホームセンターの名前を信頼して買っているのに、安かろうまずかろうではちょっと残念。返しておいでよと助言してくれた人もいるが、3週間も履いたものを返すわけにはいかないし、そんな勇気もない。ホームセンターに持っていって「買う方も買う方だ」とでも言われたら洒落にもならない。