セット

 夏休みの朝は、けたたましい蝉の鳴き声で起こされた。強い朝陽の差し込みとセットでラジオ体操に追いやられた。 1週間くらい前にクロネコヤマトの運転手さんが「今年は蝉が鳴かない」と言った。僕には夏休みとセットの記憶があるので、まだだろうと答えていたが、夏休みが十分始まっているのに未だ蝉の鳴き声が聞こえない。早朝戸外を歩きながら耳を澄ましても聞こえてくるのはウグイスやツバメや鳩、低音のカラスなど鳥の鳴き声ばかりだ。 何が起こっても素人は異常気象と結びつける。幸い僕はド素人だから自信を持って異常気象と結びつけたい。今朝興味深いことを知った。NHKで東京大学の先生が言われていたことだが、海水温が0.44度上昇しているらしい。僅か0.44度では緊迫感はないが、これの持つ意味を気温に換算すると40度の上昇と同じ意味を持つらしい。これならぴんと来る。先生にして危機的状況という表現を使わさせていた。あの冷静さでこんな言葉が出てくるのだから、余程のことなのだろう。無能な政治家のように声を大にして叫んでくれれば国民も少しは危機感を持てるのだが、学者特有の冷静さが裏目に出て、能天気な日常が又延々と繰り返されるだけだろう。聞きかじりを忘れない間に書いておくが、海水の温度上昇は莫大な水蒸気を供給して大気にエネルギーを与えてしまうのだそうだ。ゲリラ豪雨などと言うものもそれで簡単に説明が付く。世界各地の災害に関するニュースを見ていると規模が明らかに大きくなっているように見える。  それにしても降った雨が土中に吸収されないのには驚く。街をコンクリートでまるで泉水のように固めたものだから巨大な池のようなものだ。政治はコンクリートから人へとうたい、果たしてそれが実現可能か国民の注視を浴びているが、自然はコンクリートから土へと回帰を促しているように見える。人間が謙虚になり再び自然を畏れ敬うようにならなければ、この反撃には太刀打ちできない。小さな川一つだって下流から上流に流れさすことも出来ないのだから。