耳鳴り

今日の文章は、ホームページの症例報告(病気の話)の方に書けばいい内容だが、単なる症例報告以上の内容も含んでいるのでブログの方に書く。 月曜日はいつになく混み合っていて、その夫婦には1時間くらい待ってもらった。紹介してくれた女性が、もう今日は無理かなと尋ねてきたが、その夫婦は待ちますと言った。出直して来るには遠い場所の人だったこともあるが、後で症状を教えてもらって、待つと言った理由が良く分かった。抱えている症状の方がそれこそ限界に来ていて、待ってはおれなかったのだろう。 昨年の秋から数回メニエルを起こし入退院を繰り返していた男性は、病院の治療でめまいは起こらなくなった。その代わり最後の入院中から半端ではない耳鳴りに悩まされていた。勿論大きな病院だから退院後も耳鳴りの治療に通っていたのだが、4ヶ月経っても一向に改善しないどころか悪化して、折しも参院議員選挙の候補者の車の後に偶然付いて走った時もウグイス嬢の声よりも耳鳴りの方が大きな音だったらしい。自分の耳鳴りの音ををマイクに繋いで流してやりたかったと言っていた。  月曜日にやってきたときは、病院からの帰り道だったらしく、意気消沈していた。「悪いところはないからもう耳鼻科でやることはない。心療内科を紹介するからそちらに変わってくれ」とのことだったらしい。「老化現象を治せと言う方が無理で、一生その症状と上手く付き合うことが出来ないなら、心療内科しかない」ということらしい。要は病気を受け入れることが出来ないあなたは、心の病気だって事だ。体裁はいいが僕に言わせれば、治せない病気は自分の腕ではなく患者の心がけが悪いと責任転嫁しているようなものだ。治ったら私のおかげ、治らなければあなたのせいなら、こんな気楽な商売はない。 男性は余りにも大きな耳鳴りのせいで、夜眠ることが出来ずに(横になると一段と音が大きくなり恐ろしくて寝れない)4ヶ月で10Kgやせたらしい。そこまでの心労も察してあげれないのかと情けなくなるが、逆にいたずらに希望を抱かせない方がいいのかとプロの冷静さも伺われる。幸いなことに僕は専門家に比べれば素人も同然だから、僕自身が男性を前にして希望を持ってしまう。そもそも薬局に耳鳴りが発生して数ヶ月できてくれるような人は滅多にいない。ほとんどの人が数年間有名な病院やくだらない市販薬で頑張ったあげく、しかたなく栄町ヤマト薬局にやってくるのだから、こじらせきっている。彼みたいに発病間もない耳鳴りならまだ改善する可能性は十分あると思った。 余り聞いたことのないレベルの耳鳴りだったので、1週間分だけ漢方薬を作って渡した。それこそ鬱々とした表情で奥さんと並んで腰掛けていた彼は、帰るときには希望が持てたと言ってとても感謝してくれた。話を聞いてあげただけだから「治ったら感謝して」と答えて置いた。  今日で4日目なのに彼が車でやってきた。一人で来たから自分で運転が出来たのだ。その時点で僕はよい変化が起こり始めたのではないかと期待した。案の定、詳細に症状の変化を書き留めた紙を見せてもらうと翌日から音が変化し、4日目にして少しだけ聞こえる程度になったらしい。この程度なら治ったも同じだと言っていた。音色の変化、大きさの変化などが詳しく書かれていたが、嬉しくて来週の月曜日まで待てなかったと言っていた。 ここまで劇的に効くことは確かに珍しいが、彼曰く「もしこちらを紹介してもらっていなければ、どうなったか分からない」状況だったらしい。このように病院でも治らないトラブルは日常いくらでも転がっている。30年近く漢方薬を勉強してきたからこそ救える人達だ。そんな薬局が日本中に網羅されているのか。網羅どころか滅多にない化石なみだ。来年の6月以降、「病院で治して貰えなければ終わり」の人達で溢れかえる。鵜の目鷹の目でそれらを狙う業者が又暗躍するだろう。誰が決めたのか知らないが、身の回りに弱者の範疇にはいる人がいない恵まれた環境の人達だろう。折しも投票日間近。心地よいだけの言葉は燃えるゴミか、はたまた埋め立てゴミか。