含蓄

 食事時間が重なったり、風呂に入っている時間に見たりするから、週末以外はそのチャンネルに合わせてしまうことが多い。朝は朝で、昼は昼で、夜は夜で後味の悪さに不快になる。果たして僕だけの感情なのかあるいは若干の普遍性はあるのか分からないが、堅いことを言わせてもらいたい。 朝は、例の無実の人を人相から犯人らしく報じた輩。普通の神経ならマスコミに露出できないと思うのだけれど、そこはさすがにお金の魔力。なんのことはない、稼ぎまくっている。凝りもせず分かった顔をして、いやいやより質の悪いことに正義感を振りまいて、言いたい放題だ。どのくらい良心的に暮らしているのか知らないが、よくも言えたものだと思う。まさか弱者や貧乏人の味方ではあるまいに。  昼はその彼が以前やっていた番組の後。僕はニュースが見たくてその時間にチャンネルを合わせるのだが、ニュースの途中に司会者がくだらない話題で介入する。伝えられるニュースの多くは世の避けられなかった不幸な事件のことが多い。犯罪や事故に遭遇した人達の、いやいやそれに留まらず多くの周辺の人達も一瞬にして不幸のどん底に陥れられている、そんなニュースを伝えた後に、まるでタレント気取りのアナウンサーに冗談を言う傲慢さが許せない。他人の不幸も単なる商品なのだ。  夜は神経質そうなメガネをかけた男が伝えるニュース番組。言葉の抑揚や、間で、ニュアンスを伝え、自分の考えを暗に押しつけている。ふがいないのは、そこに出てくる解説者みたいな男。安易に同意するだけだ。そもそも出来レースを見させられているのではないかと最近は分かってきたので、チャンネルを合わせることが少なくなった。あのしたり顔の表情や話し方が不快で仕方ない。 見なければいい。もうそれしかないと思い始めている。くだらないタレントばかりの番組か、出演料欲しさの評論家?の単なる営業に目くじらを立てる必要もないのかもしれないが、いやしくも電波を優先的に使うことが出来る者達はもう少し謙遜であって欲しい。素人に毛が生えたくらいで何をえらそうにしているのかと疎ましくなる。買い物に来るおじさんやおばさんの方が余程見識がある。含蓄は日に焼けて皺だらけの顔の谷間にこそ宿る。