歪曲

 もう何がなにやら分からない。LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロール脳梗塞には善玉だという論文を東海大学の大櫛教授が発表した。今までの常識では脳梗塞心筋梗塞の両方に悪くて、それこそ血管系の病気の、それも重症のものの元凶のように言われ、病院で必死で下げられていたのに。仮にもしそうなら、治療することで寿命を縮めていたことになる。解明が進んでいなかっただけだから、単なる善意のお節介でしかないが、もしそうなら結果的に死期を早められた人は多いに違いない。科学の発達でありとあらゆるものが「解明されるべきもの」の対象になっているが、もうこうなったらほどほどでもいいのではないかと思ったりする。 地域の病院が皆やすんでいるせいで、今日は雑多な仕事が多かった。鎮痛薬やカゼ薬、下痢や目薬と、昔多くの薬局がお世話していたようなトラブルが多かった。ただ、今その様な軽医療をお世話できるところが少なくなった。僕が一般人なら、何処に入っていったらいいのか迷ってしまう。今はそんなに出かけないが、少し前まではしょっちゅう勉強会を兼ねて都会に出かけ、薬局を見て回った。年々見るべき薬局は少なくなり、いや、見るも見ないも薬局が見つけられなくなっていた。  娘は今日から九州のある薬局を見学させてもらいに出かけていった。あることで著名な方で、見ず知らずの若い薬剤師の希望を叶えてくれた。これから長い薬剤師人生、薬局人生を歩もうとしていて、僕以上のものを身につけようとしているのだろう。僕はいわゆるOTCと漢方薬を中心にやってきたが、今ひとつ挑戦したいものがあるみたいだ。安易ではない道だが、人の役に立てるという生きていく上でのモチベーションとしては十分だろう。誰もが必ずどこかで誰かの役に立ち、誰かを救い、誰かを慰め、誰かを喜ばせている。そんな循環が保証されるほど人間は本来的には善良なのだ。 少し甘いものを控え、野菜を増やし、少しだけウォーキングしていたが、今日の論文の件で若干の養生心が萎えてしまった。今長生きしている人は、ほとんど情報などなくただ一生懸命働いていただけの人達だ。いたずらに健康を追った人達ではないように見える。 自分に都合の良いように人の功績を歪曲するのは今も昔も得意中の得意だ。だからこうなった。