本末転倒

 コレステロール値が高く、高脂血症と診断された人の方が、そうでない人よりも脳卒中の死亡率が低く、症状も軽くなるという調査結果を、東海大の大櫛陽一教授(医療統計学)らがまとめた。一般には高脂血症動脈硬化を引き起こすため危険と考えられており、今後、議論が高まりそうだ。大櫛教授らは動脈硬化が一因とされる脳卒中脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)で入院した患者計1万6850人を対象に、高脂血症の有無と死亡率、症状の強さを比較した。その結果、脳梗塞で入院した患者のうち、高脂血症でない9851人が入院中に死亡した割合は約5・5%だったが、高脂血症の2311人の死亡率は約2・4%にとどまった。脳内出血や、くも膜下出血でも、高脂血症があると、死亡率は半分から3分の1だった。  ホラホラ万全の仕掛けにそろそろほころびが見え始めた。コレステロール悪人説が全盛でものすごく莫大なお金がその為に使われている。毎日送られてくる製薬会社のパンフレットに、コレステロールを下げる薬の宣伝が載っていない日はない。それはそうだろう、ある年齢に達すれば誰だって基準値を超えてしまう。そうなれば全員が患者=薬の消費者になりうるのだから、こんなに有り難い病気はない。コレステロールを下げれば健康で長生きが出来ると、医療従事者はもとより患者も啓蒙=洗脳されているから断る人などいないだろう。上の論文をどのくらいの医師が読んで真剣に考えるのか分からないが、企業に従順な医師の方が力を持つのがあの世界でも常識だから、果たして正当に評価の対象になるのかどうか。このような説を切り捨てないで真剣に企業とは別の所で検証して欲しい。  僕も薬局で多くの高コレステロールの方の元気さは経験している。並はずれて元気だなあと感じた人に、興味本位でその辺りの問診をしてみると、コレステロールが高い人が多い。そんな人はほとんど治療をしていない。それはそうだろう、自分で満足のいく健康度なのだから、今を変える必要はない。コレステロールを材料に体に必要な物質が作られることを思えば、材料を多く持っている人が元気なのは当たり前だし、逆に低い人が細々と生きているのも頷ける。  難病以外もうすでに薬は網羅されているとは、世界一大きな製薬会社の社長の言葉だが、それなら同じような薬を作らずに、本当に困っている人達のために、資本と叡智を集約させて欲しい。市場に出された薬が増えただけ医療費が上がり、病院や薬局が増えた分だけ医療費が上がったのでは本末転倒だ。