マウンティングバイク

 何というファッションか知らないが、まさに決めた若い男性がマウンテンバイクに乗って薬局の前を通り過ぎた。先のとんがったヘルメット、サングラス、上下おそろいのジーンズ姿。懸命に漕いでいるがスピードが出ていない。なんだか平地を走るには不合理なように感じた。調剤室から偶然見ていたのだが、視界から消えた途端すぐに何故か引き返してきた。  実は3日くらい前から駐車場と道路の丁度境くらいに紅葉マークが落ちていた。気にはなっていたがそのままにしていた。それをさっき視界から消え引き返してきた青年がさっと拾って自分の自転車の後ろ側に貼って何もないようにスッと去っていった。その間10秒くらいの出来事だった。格好良く決めた青年のマウンテンバイクに紅葉マークの取り合わせがすごく面白かった。それをこともなくやってしまった青年のユーモアに感心した。恐らく誰かが見ているだろうなどと想像もしないでとっさの判断なのだろうが、陰の観客としてはとても面白い寸劇を見せてもらったような気がした。  こんな光景に毎日出くわすことが出来れば、少しは肩に力を入れずに暮らすことが出来るのにと、つい肩に力を入れて考え込んだ。