駅員

 最近のJRはとてもサービスがいい。かの国の若者を連れて電車を利用するときに、販売機で買うのが面倒だから窓口で買うようにしているが、必ず回数券の利用を勧めてくれ運賃を安くしてくれる。1人分くらいが浮く勘定になる。数年前に偶然児島駅で経験してから、よその駅でも同じ対応をしてくれることが分かって、重宝している。  この日曜日、いつものように児島駅の窓口で丸亀の往復を5人分買い求めようとした。その日の駅員さんは今まで以上に親切だった。かの国の女性達を待たせて僕だけで窓口に行き、丸亀との往復券5枚を注文した。すると中年の駅員さんが「お客さん、丸亀ボートに行かれるんですか?本日丸亀ボートは・・・・・・・・・特別お得になりますから、そちらにしておきましょうか?」と説明してくれた。この点線の部分は理解できなかった。恐らく競艇の専門用語なのだろう。ただなんとなく、特典があるのだろうなとは想像がついた。ただし、残念ながら僕は競艇には興味がない。だから、折角勧めて貰った特典も利用できないから丁重にお断りして、いつも通り普通の回数券を買い求めた。  それにしてもこの僕が、競艇に通うおじさんに見えたのか。何処から見ても知性と教養に溢れているようにしか見えないのに。ただしその日の僕は、少し猫背で肩が揺れ、歩くたびに白い先のとんがった靴は外側に向き、耳に鉛筆を挟み、サングラスをかけ爪楊枝をくわえていただけなのだ。  僕にもプライドはあるから駅員さんにお礼を言った後「丸亀には第九を聴きに行くんです」と説明した。すると駅員さんは分かってくれたみたいで「第九レースですか?」と笑顔で答えた。どこまでも親切な駅員さんだった。