何年か前に水素水なる名前を聞いたことがあったが、別に実害を感じなかったからいつもの金余り老人が、長年苦労して働いて得た金を吸い取られる社会現象として捕らえていた。いわば合法的なコレコレ詐欺だ。  大体この手のものは、現代医学がなかなか解決できないものをうたい文句にして販売する。それはそうだろう、風邪とか水虫とかでは既存の薬で解決してしまえるから出番がなくなる。そこであたかもそれで解決するかのように嘘をつき、健康お宅から金を巻き上げる。ネット上には以下に示すような声が上がっているらしいが、なかなかユーモラスで核心を突いている。どれも面白いが、僕は最後の方の文章が現代では一番大切な指摘だと思っている。キャッチコピーで言うと3番と4番は秀作だ。

「そんなに凄い効果があったらコンビニでソフトドリンクと同じ枠で売られてねーわw」 「声出して笑った 」 「水分補給なら水道水でいいわ」 「ちゃんとした『ただの水』と証明されたね  よかったね」 「昔なら雑誌の裏に怪しいメーカーが載せてるようなレベルの商品なのに、景気悪化後は大手メーカーまでこぞってやってたのが 悪質だな」    若い者達の食事が済んでから僕の番になるので、僕が昼食をとるのは午後2時頃から3時頃。何かの拍子で4時頃になることもある。その時間帯にテレビを見る人は少ないかもしれないが、その頃に流れるテレビコマーシャルはもうほとんど無法地帯だ。役人と企業が裏で取引しているのかと思えるほど巧妙な表現のオンパレードだ。効能をうたってはいけないものが、まるっきりピンポイントで効能が想像できる言葉で宣伝されている。サッカーのことを、11人で手を使わずにボールを蹴り合って相手ゴールにいれる競技と言っているようなもので、決してサッカーとは言っていませんと居直れるように出来ている。  ただ、このようなことはそれこそ嘗ては胡散臭い業者がやっていたことで、いわゆる大きな企業が手を染める分野ではなかった。ところが最近はそんな胡散臭い業者に混じって、しばしば目にする大企業が同じような胡散臭いものを作り胡散臭い宣伝で金を巻き上げている。どうにも居心地が悪かったが、見事に同じ危惧を表現してくれた方がいて、若干溜飲を下げた。こんなものがそれこそ雨後のたけのこのように次から次に現れ、血と涙の結晶を根こそぎ奪っていく。そんなに金が欲しいのか。