魅力

 スタッフの女性が2人でお互いにシップを貼りっこしていた。2人とも首から肩に掛けて貼っていた。それを見た僕は「ヤマト薬局って、そんなに過酷な職場なの?」と冗談で尋ねた。  とは言え、薬剤師は下を向く作業が多いから、首や肩こりは職業病に近い。又煎じ薬を作ったり、微粉末の現代薬を調剤する工程では喘息も職業病に数えられる。極端な例では、抗がん剤を調剤するときは、特に妊娠が予定される薬剤師は気をつけなければならない。なんとも皮肉なものだが、抗がん剤がガンの原因になると言う間接的な証明でもある。  こうしてみると薬局の中も結構大変だ。健康を提供する職業が不健康まみれでは洒落にならない。特に僕など上から下まで、いや表面から内部まで不健康きわまるから、モルモットみたいなものだ。どんな薬がどのような期間でどのように効くか、効かないかを試す機会が多い。昨夜強烈な悪寒がした。どうして今になって珍しく風邪を引いたりするのかいやになるが、それでも猶予は30時間あまりだ。何故なら、明日は牛窓から5人、児島駅で2人拾って丸亀まで連れて行かなければならないから。昨夜は9時には寝たが、それが一応効を奏して今日は1日普段どおり仕事が出来た。ただし、これはかなり薬で人為的に抑えているだけだから、明日起きてみなければ本当に四国まで行けるかどうか分からない。  決して重いものを持ったり、暑い所や寒い所で仕事をするわけではないのに、これだけ不健康では、他のどんな仕事も出来ないような気がする。決してなりたくてなった職業ではないが、これしか出来なかったのかもしれない。そんなに肉体労働でもない、そんなに知的な労働でもない、誰でも出来る仕事。これが薬剤師の魅力かも。