豚と牛

 僕が臆病なのかもしれないが、薬局でCT(コンピューター断層写真)を受けたことを自慢げに話す人がいたら、尊敬してしまう。どうしても仕方ないときと言うものがあるのだろうが、好んで医師に依頼してやってもらったりしているから、その勇気に感心する。アメリカのコロンビア大学の研究チームによると、これから発病する癌の2%がCT検査が原因で起きる恐れがあるらしい。日本人は、医師にも患者にもCT信仰が根付いているので、ひょっとしたらアメリカの数字の何倍にもなるかもしれない。日本のCTを開発した偉い先生も放射線は浴びない程良いのは確かと言っている。しかし、1億円近い機械を購入した医療機関が、それを頻繁に使ってお金を回収しようとするのは容易に想像が付く。だから、患者に夢のようなことを語っても、患者は最低限自分を守らないといけない。本当に、聴診器だけで治らないのかを考えなければならない。  CTに限らず、医療に留まらず、美辞麗句が毎日闊歩し、消費者を混乱させている。企業は知識を集積して、ありとあらゆる手段で、消費者の防御服を破ろうとする。余程強靱な知恵と言う名の防御服を着ていないと容易に短剣は刺さる。華々しいものには裏を見る癖をつければいい。欠点のない話は、それ自体が欠点だと思えばいい。うさんくささを見抜く訓練を日々しなければならない。自分に都合の良い話など、うさん臭さの筆頭だ。特に鼻の頭が丸い人は気をつけて。人を信じてしまう相だ。僕みたいに鼻がとんがっている人は、良い話ほど信じない持って生まれた自衛の手段が備わっている。そのおかげで守られもしたが、良い話にも巡り会わなかった。まあ、トントンだからそれでいい。ギュウギュウだと息が詰まる。分かるかな。