卑下

 40年くらい人とひたすら話をしてきたので、素人ながらにつかめることもある。  素人が感じていたことが権威ある雑誌や人物から発信されると自信を持つこともで きるし、そんなに人間って違わないんだと、卑下することもないんだとも思う。  ある患者さんが、しぶしぶ僕の漢方薬を飲み始めたのは、とある総合病院で糖尿の 治療をしてもらっていた時だ。処方箋を持ってくるわけでもなく、何かのついでにや ってきたときに症状が改善しないことを何度も愚痴るのを聞いていたが、その改善し ない理由が医師ではなく患者にあることに僕は気が付いた。それはその女性の態度が とても高慢なのだ。ご主人の職業がそれなりに人の尊敬を集めるものではあったが、 それはひとえにご主人の功績で妻たるその女性とは無関係だ。ところが妻こそ権威を 振りかざし、人を見下すような物言いをする。当然感謝の言葉など辞書にはない。こ のような態度を診察室で取られると、普通の医師なら触らぬ神に祟りなしだ。適当に 扱うにきまっている。だから数年間どんどん悪化していた。  僕の漢方薬を飲み始めて、悪化は食い止められたが、それは僕の漢方薬が優れてい たからではない。僕がその女性を特別視しないからだ。言いたいことをずけずけ言っ て、命が惜しかったらまじめに取り組むように単刀直入に言ったからだ。おそらく僕 も医師たちのように「気遣い」したら、今頃足くらい切り落とされているだろう。  こんな経験は珍しくない。僕の先生は僕などよりもっともっと人間観察力がすごい 方で、薬が効かないのは「心に敵がいる人と、すぐに上げ足を取る人だ」と断言して いた。この話を聞いて何度なるほどと思ったことか。  以下の権威ある文章をぜひ読んで、上手に医者にかかってほしい。 

対応困難な患者は良い治療を受けられない可能性があることが、オランダ、エラスム ス大学医療センター・ロッテルダム医療教育研究所、准教授のSilvia Mamede氏らが実施した研究で示された。 非協力的な患者は、要求が多かったり、医師の助言を無視したり、指示に従わなかったりした。 複雑な症例の場合、普通の患者と比較して、非協力的な患者では診断の正確さが42%低下した。 Mamede氏は、「非協力的な患者は医師の『注意を引く』ため、医師は実際の症状に集中できな い。十分な診療が受けられなければ、患者はさらにいらつき、負のスパイラルが生じる」と話す。