変身

 一瞬顔をのぞき込んで確認した。それでもなおがてんがいかなかった。1ヶ月前に薬を取りに来たその子は、今日同じ名前を言って薬を取りに来た子とは違う。姉妹かなと思ったがそうではなかった。やはり本人なのだ。  親からその子は京都に行くと聞いていた。大学か就職か知らないが、新しい生活を京都で始めるらしい。そのためではないのだろうが、今日は服装もハンドバッグも雑誌の表紙から飛び出してきたような格好をしていた。顔もお化粧をしてなかなか美人になっていた。間違えるのもうなずけるほど変身していた。幼いときから知ってる。とてもおとなしい子だった。こんなに華やかに変身するとは思わなかった。希望に胸をふくらませているのか、とても表情が良かった。前を向いて生きている時は、こんなにいい顔をするのかと思えるほど、顔の中に春が咲いていた。季節がもたらした暖かさよりももっと暖かい雰囲気だった。  生物的に見て、人生で一番美しい時をこれから都会で暮らす。いつまでも今日の表情が変わらないことを祈る。怒りも憎しみも、恐怖も悲しみも、その子に訪れませんように。京都の街がいつも微笑んで彼女を抱きしめてくれますように。