童話

 おもしろい光景を見た。電信柱の上で数十センチ離れたところに、カラスとコサギが並んで留まっていた。先にコサギが留まっていたのだが、カラスが後からやってきた。童話的に表現すれば、仲良く並んで留まっていた・・・になるのだろうが、不思議な光景に「実際」を知りたくてしばらく眺めていた。少し離れたところから見ていたので、2羽の、例えば目の動きなど見えないから、駆け引きは分からないが、しばらくそれこそ種を越えて仲がいいのかと思えるくらい、お互い静かに留まり続けていた。  突然2羽が同時に飛び上がると、コサギをカラスが追いかけた。恐らく威嚇だけなのだろう、追いつくことはしなかった。コサギも懸命にと言うより優雅に飛び去った。「実際」はやはり弱肉強食なのだろう。同じくらいの体格だから、争うことはしなかったが、いつも留まっている電信柱は僕の記憶によるとカラスの縄張りで、コサギの侵犯を許せなかったのだろう。カラスがお気に入りの休息所になっていて、下を通る僕にしばしばドスの利いた鳴き声を浴びせてくる。  童話のような世界は無いのだろうか。それとも目にしたり耳にしたりする感性が僕にないのだろうか。週刊誌のネタになるような出来事しか残念ながら届かない。童話を書くのは大人なのだが、それは特殊な才能を持っている人だけのことで、僕らはせいぜい登場人物の悪者くらいの存在でしかなく、読み聞かせる資格もないような気がする。