用心棒

 畑違いだが、田圃違いではない。  慌てた声で電話があった。今し方カラスにツバメの巣を襲われて、地面に落ちた雛が4羽まだ生きていると言うのだ。どうしたらいいでしょうと言うのだが、まさか漢方薬を飲ませるわけにはいかないので答えに窮していたら、そもそも娘に電話をくれたものだった。娘がツバメに詳しいとは思わないが、気にかけていることは誰もが認めるところだから、薬局を利用してくださる人はツバメイコール娘だったのかもしれない。 ただ我が家では動物に関しては圧倒的に妻が詳しいから(動物と話すことが出来る。動物の声を代弁することが出来る)、娘はすぐに母親に振った。すると妻はすぐに獣医さんに電話をかけて指示を仰いだ。そしてその指示とインターネットからダウンロードした人工の巣の写真を持って出ていった。きっとこれで何とかなるのではないか、そんな予感がした動物好きの人達の連携振りだった。  ところで今日、そんな憎きカラスを追いかけ回している一羽の鳶を見た。僕が何かの用事で戸外に出ていたとき、地面に大きな陰が走った。驚いて空を見上げると、1羽の鳶が勢いよく大屋根の向こうに飛んでいくのが見えた。慌てて表に回ってみると、鳶が1羽のカラスを追いかけていた。すぐに追いついてそれこそ至近距離をカラスが飛ぶと同じように飛んで追尾していた。恐らくカラスは逃げまどっているのだが鳶は全く離れない。そして最後には隣のNTTの建物の向こうに2羽で急降下し消えた。 その後どうなったかは分からない。鳶がカラスを仕留めたのか、追い払っただけなのか分からないが、ほとんど天敵がいなくなったのではないかと思われる昨今のカラスの横暴振りに一矢を報いてくれたのが嬉しい。願わくばこの辺りに住みついて、ツバメの用心棒になって欲しい。