能力

僕にもう少し能力があればなあと、思うような人が今日は集中して訪ねてきてくれた。勿論お手伝い出来ることはあるから全員漢方薬を作って、共同作業のスタートを切った。  週末の解放された空気のこの町の小さな薬局にやってきてくれて、体に抱えたトラブルについて話をする。窓ガラス一枚を境に中と外では世界が違う。どんな人間を想像してやって来てくれるのか分からないが、迎える僕がこの程度だからまず失望から始まるのだろうか。奇跡は起こせないが、奇跡が起こってなんとか回復して欲しいと思う人ばかりだ。薬剤師がそんな事を思うのは非科学的かもしれないが、科学だけでは解決しないことは多い。  日常の出来ないこと、我慢していることをなんとか取り返して欲しい。出来ないことの不自由は、出来ることの自由さえ侵食してしまう。小さな笑い声でもいい、心の緊張が取れる時間を経験して欲しい。緊張になれた現代人にとって、ゆるむことはかなり難しい。いつも何かと戦って、あげくは自分の身体と戦って矢、折れる。  幸せは窓ガラスの向こうだ。太陽は輝き、空気は踊る。誰もが外で咲くべきだし、輝くべきだ。不条理は忍びこんだ廃屋の中で朽ちてしまえ。こちら側に、着陸の為の滑走路は用意されていない。飛び立つ羽は遥か上空を旋回する光の帯の中に用意されている。誰もが等しくてを伸ばして、つかんで欲しい。