知性

 2週間ごと、夫婦で股関節の漢方薬を取りに来る人がいる。問診が終わり雑談をしている時に面白い話を聞いた。結膜炎の目薬も下さいと言うので、目の症状を尋ねていたときのことだ。  数ヶ月前に、ある眼科にかかったそうだ。受付で症状を言うと、奥から医師が、車で来ているかどうか尋ねて、車で待っているように言われたそうだ。車で待っていると受付が呼びに来てくれたので、待合室に入った。すると診察室から医師の声で「感染症の○○さん、お入りください」と呼ばれたそうだ。そしてなににも触らないでと注意されて診察を受けたそうだ。話の途中で悪いけれど大きな声で笑ってしまった。話してくれる本人も、ご主人も大きな声で笑っているから許されるのかもしれないが、本来はゆゆしき問題をはらんでいる。他の患者さんの前で、病名を想像出来るようなことを漏らしたことも問題だし、たかが結膜炎くらいで、そこまでするのは大袈裟だ。僕はその話の内容で、すぐ病的なものを感じた。普通の医者がとれる態度ではない。お金ばっかりにしか興味を示さない医者も多いから、あながち医者を特別視するつもりはないが、この余りにも常識を逸脱した感性には、資質ではなく病気以外には説明がつかない。そのほかにもこも医者にまつわることを聞いたがとても哀れでここでは書けない。  なにも聖人であってだなんて誰も思ってはいないだろう。ただ、極普通の、誰もが持っているレベルの感情程度は持っていて欲しい。そうしないと、折角もち合わせている知性が、単に数学を解いたり、英語を読んだりするためだけのもので終わってしまう。