台風

 僕を漢方の世界に導いて下さったかたの奥さんがFAXをくれた。文面の最後に、薬局を閉めてドラッグで働いているが、やはり薬剤師は、薬局で直接患者さんの悩みを聞き、調剤して治して上げないとやりがいはないと書いていた。そして、「大和さんは、いつまでも頑張って下さい」と言う言葉で締めくくられていた。  そのことを僕に伝えるために書かれた文章ではないだろうが、僕は心を打たれた。丁度、不快なことが進行中の頃で、薬剤師とは一体なになのだろうと、毎日のように考え悩んでいたからだ。自分の引き際も含めて答えのない問題を毎日解いているような時に投げかけられた言葉でいつまでも心に残った。ご主人の死を契機に色々なことを経験されたあげくの言葉に僕はとても重みを感じた。今までやってきたことをいつまでも続けるべきなのかと思った。  台風が近づいていることを思わせるたたきつけるような雨の中、遠くから漢方薬を取りに来てくれた若い夫婦がある。やはり僕はここにいなければならないのだと、奥さんの憂いを秘めた表情に中に感じてしまう。なにかに秀でているわけではない。才能は何一つ開花しなかった。社会に貢献したものよりはるかに罪深いことをした。許しを乞いたいといつも思っていた。教会の懺悔の部屋に入り、信頼する神父様の前で教えを乞う。僕の100倍にも勝る包容力の前で精神が音をたたて崩れ落ちる。