遠近両用

 もともと、遠くのものは見えにくいのだが、最近は近くのものも見えにくくなり、めがねをはずしたりかけたりを繰り返している。これはなかなかの不便だ。年配のかたのそうした仕草を何気なく見ていたが、自分が当事者になってしまった。余りの不便さに意を決して今日眼鏡屋さんに行った。全国チェーンの「めがねの四季」?語気?やる気?一気?名前は忘れてしまった。  おそらく20歳代の若い女性が相手をしてくれた。受付だけかと思ったら、検眼も全て彼女がしてくれた。かつては男性の方が実務は全てしてくれていたと思うのだが、彼女は何ら不都合なく、僕のメガネ作りを最後まで指導してくれた。洗練された物腰、言葉の中にも、マニュアルではない、本当の笑顔を随所にちりばめ、僕の緊張感をとってくれた。有名チェーンを信頼して訪ねたのだが、いったんドアを開けて入ってからは、僕は彼女を信頼し始めていた。彼女に一体何が備わっていたのだろう。まずは技術、丁寧な言葉と振るまい、誠意、それだけではない、他にもっとあったはずだ。僕はその会社の教育能力に驚いた。彼女だけが突出して優れているのではないことは、他の方の応対ぶりを見ていれば分かるから。  結局僕は、考えていた値段の倍くらいなのに決めた。「あなたが正しいと思うものにして下さい」とレンズもフレームもまかせたのだ。僕は最近人を信用することに臆病になっていた。でもこの若さ溢れる女性を僕は一時間あまりの間信頼しきっていた。人を信用すと、とても心が明るい。台風一過の青空にまけないくらい、さわやかで仕事熱心な女性だった。