留学

 ある青年が今日フィリピンに渡る。数年前にだれが想像しただろう。心に秘めたものはあるだろうが、多くを語らないし、多くを聞かない。ただ、健康に留意して目的が達せられるといいと思う。  青春前期の心の葛藤は内に秘められるか、他者を攻撃するか、発露の選択肢は限られている。彼の場合、学校と言う檻から抜け出すことにより、選択肢が広がった。脱落ではなく、脱出だったのだ。  息が詰まるように管理されたこの国に居場所がなければ、外国に行けばいい。勉強したければ、学費や生活費が安い国に行けばいい。留学先で日本を選ぶ東南アジアの人々は多いが、その逆があってもよい。この発想をしてくれた人がいた。水を得た魚のように彼の青春が再起動した。10年近い勉強の期間が待っている。健康ならばやり遂げられるのではないかと思っている。いつかきっと、多くの恵みを持って帰ってくると思う。  苦痛に満ちた日々を綴る人達。一人苦しみの中にいてはいけない。周りの人達に心のうちを吐露すべきだ。そうするとよい知恵を貸してくれる人がきっと現れる。口から出さなければだれにも聞こえない。一人で戦えるほど時代は単純ではない。よい心を持って、助けを求めれば、よい答えが返って来る。  いつの日か多くを返す為に、今日、多くをいただけばいい。