去年の夏、ある方からの紹介でC型肝炎の女性のお世話をしている。当初は肝炎症状のほかに色々な不定愁訴もあったが、今は元気に幸せそうに暮らしている。今日、病院の検査の日だったらしいが、担当が偶然息子だったらしい。検査の結果がすこぶるよくて患者さんは息子と手を取り合って喜んだらしい。この際インターフェロンで一気にウイルスをたたこうと入院の日程も決めてきたらしい。実はその患者さんは、以前にも入院を勧められたらしいが、主治医がどうしても受け入れがたくて、看護師に断わったらしい。息子さんはさわやかだったから決めたといっていた。タバコを吸ってもいいかと尋ねたら、肝臓には影響ないからと止める様には言われなかったらしい。そこが受けたのかもしれない。息子もある日突然劣等生になった部類だから、きっとその辺りはおおらかだと思う。似ているなあと思った。僕も実は多くのアル中に、「飲めばいいが」とおおらかな言葉をかけていた。酒を我慢してのた打ち回って数年長生きするよりは、酒浸りになって死んだらいいではないのと言っていた。その言葉通り、多くのアル中が酒を堪能して早く逝ってしまった。幸せそうに皆飲んでいた。  成功体験なんか何の役にも立たない。そんなものに導かれた記憶はない。息子も失われた1年で、多くのものを獲得した。今の職業にこれでついていいのだと僕は遠くからみていて思っていた。これで人の役に立てれるとその時初めて確信を持った。  毎日を苦痛の内に暮らしているあなた。じっと苦しみに耐えるような修行をする必要はない。時にはルーズに生きたらいい。その脱線こそがあなたを再生させる。決まりきった無難な生活で何が得られる。ちょっとばかりの成功なんてくだらない。多いに躓いて、人生を1周でも2周でも遅れて走ればいい。どうせ皆、生まれた日から死に向かって走り出しているのだから、急ぐ必要はない。人生を貪欲に色濃く味わったらいい。日の当るところにい続けると倒れてしまう。時には陰に逃げこまなければ。