栄華

昔の栄華をいつまでも引き摺って生きている人がいる。いや、引き摺らなければ生きていけないのかもしれない。もし拠り所が過去にしかないのなら、それも他者にとって記憶の彼方なら、なんとも憐れだ。それこそ昭和の初期、地主金持ちが我が物顔で暮らして行けたそのままを今だ身につけている。性質が悪いのは、凋落して庶民の仲間にはいったのに、それが認められない自尊心の塊のような人だ。すべての行いが浮いている。異質で塗り固められた価値観は、失笑の対象でしかないのだが、本人にとっては、諭してくれる人もないので過去の化身のままだ。とうとうと流れる大河だって、1秒たりとも同質であることはない。まして、水に溶けた気泡の1つほどの価値もない僕らに上流はない。流れに任せて海に下り旅を終えるだけだ。