逆行

ある試算によると、東北地方の米作り農家の時間給は330円だそうだ。経済市場主義の煽りで、米の価格も下がりつづけ、30年前の値段にもどったらしい。販売額から費用を差し引いたら赤字になる。手間隙かけて、太陽に焼かれ、雨に打たれて働いた挙句が、赤字では浮かばれない。水田の保水力を考えれば、目には見えないが、安全にも多大の貢献をしてくれているのに、その時間給は馬鹿にしている。農家は嘗て、国に手厚い保護を受けていた。しかし、選挙での集票力にかげりが出始めたら、もう見向きもされなくなった。農村の疲弊、農民の所得より、国にとっては工業製品の輸出の方が大切らしい。経済界の首脳が我が物顔で政治を操り、景気のよい一部の地域に秋田や青森から出稼ぎを集める。米の値段だけではなく、人の尊厳、地域の尊厳までが時代を逆行しているようだ。