検診

 おそらく、薬剤師も医者と同じように検診を最も受けない職業のトップをうかがっているだろう。実際、余程の病気でも病院にいかないのだから、検診なんかわざわざ受ける人は少ないだろう。僕もそのうちの一人だ。そんな人の為に、自宅で血液をちょっと取って郵送すれば調べてくれるサービスがあり、数年前から薬剤師会もそれを利用している。  今朝のびのびにしていた採血をやろうと思って、送られてきたキットを机の上に並べた。説明書にしたがって順番に行えばうまく出来るようになっている。4滴の血液を小さなボトルに落として下さいと説明書きがあったので、同封のアルコールを染ませた脱脂綿で左手の中指をよく消毒した。アルコールが乾いてから、右手に持った針が飛び出してきて皮膚に穴をあけるおもちゃのようなバネ式の道具で、穴をあけようとしてスイッチを押した。すると、針がスイッチとおぼしき所から出てきて右手の人差し指に穴をあけてしまった。さっき、一生懸命消毒した左手の指は全く無傷だった。痛みを覚悟していた左の指は何ともなくて、覚悟をしていないほうの手に痛みが走ったので、思わず「いたっ」と声をあげた。その後は、自分でもおかしいくらい笑えた。何回も痛い目はしたくないので、消毒はしていなかったけれど、そのまま指を絞って血液を確保した。消毒していないからどんな雑菌が混ざるか分からないけれど、元々きれいな血液でもないし、汚れた心までは検査に出ないだろうから、封書に入れて切手を貼った。  こんな小さな失敗から今年最後の週が始まった。