置き去り

 思わず笑ってしまったが、当事者も笑っているのだから構わないだろう。若干の後悔はあったみたいだが。 夕方、ある女性が消毒薬を買いに来た。指名してきたからそれを買って帰ってくれればそれでいいのだが、やはりそこは薬剤師、何に使うのかは最低限尋ねる。すると女性は「100円均一で消毒薬を買って傷につけたんじゃけど、気持ち悪いから消毒するんです」と答えた。消毒薬を消毒するってのはなかなか面白いネタで、薬局以外で発表できていたら、きっと大受けで人気者になっていただろう。残念ながら僕一人しか聞けなかったネタだが、考えさせられる内容も含んでいた。  100円均一の店で、消毒薬なるものが売られているのだろうか。売る権利があるのだろうか。このところの、特権階級は影響を受けない規制緩和で何でもありになったが、薬を100円均一で売ることが出来るとはまだ聞いていない。どうもこの規制緩和は、政治屋が業界から集金するための道具のような気がして仕方ない。大企業が根こそぎ小さな商店を破壊していく最終手段のような気がする。いずれ商圏は更地になり、大企業が唯一存在するようになるだろう。弱いものの規制はますます強くなり、強いものに対してはますます野放しだ。意図は透けている。  強いものを崇める風潮は本来動物が持っているもので仕方ないと思うが、そこまでやるかの段階に達している。とても人間扱いされていないレベルの人間でもあがめ奉っている。いや、それだからこそ崇め奉っているのだろうか。哀れとしか言いようがない。尊厳を置き去りに毎日が輝くのだろうかと問うてみたい。