500日

 この国の人は、なんてお人よしなのだろうと思った。朝、テレビをつけるとどのチャンネルも、ある野球選手の記者会見の場面を衛生生中継していた。その選手の契約が1年あたり十億円以上だと記憶している。もう少し多かったかな。あまり興味がないので詳細な数字は覚えていないが、十億からひょっとしてら15億くらいだったかもしれない。どちらにしてもとんでもない数字で、おそらく一般の方が1年間働いて稼ぐお金を彼は1日で稼ぐことになると思う。計算間違いかもしれないが、ひょっとしたら今話題のフリーターや派遣の人達だと、彼の1日分は、彼ら、彼女らの1年半分になるのではないか。想像して欲しい、毎日一生懸命働き500日目にもらえたお金をボールを投げるだけで1日でもらえる人がいることを。おまけに、テレビのインタビューで答えている人は、その選手に、頑張って欲しいとエールを送っている。どうみても500日働く人にしか見えない人達が、1日働く人にエールを送っている。この人のよさは一体なになのだ。仕事に貴賎はない。僕は、1日働く人が、500日働く人にエールを送るべきだと思う。頑張って欲しい、活躍して欲しい、成功を祈っている・・・500日に本来送られるべき言葉ではないか。汗にまみれる、泥にまみれる、潮にまみれる、油にまみれる、罵声にまみれる、汚物にまみれる・・・500日は、今日も黙々と働き社会を支えている。社会の中でその他大勢なんかいない。マスコミがもてはやす間に、社会で起こっている見せたくないものが隠れてしまう。マスコミは正義でも何でもない。功罪で分けるとどちらに転ぶか分からない。不愉快な朝の始まりだった。