合理主義

 近道は遠回りより、近いのか。安いものは高いものより劣っているのか。早いことは、ゆっくりより生産的なのか。軽いことは重いことより便利なのか。上手は下手より賞賛を浴びるのか。 100人の人間より、1つのロボットか。  なにの疑いも持たなかった。合理的こそ、目的を手に収めるための必要条件だと信じていた。不合理を克服することが幸せを早く手に入れる方法だと思っていた。うまく、ずるがしこく振舞うことを、合理的などという言葉でごまかして生きていた。不器用でしか生きられないことで得られる大切なことを失っていた。うまく生きることで得られることなんか、所詮物質の世界か、裏切りの世界だ。そんなもの時とともに壊れてしまう。形あるものははかない。よい人に巡り会い、その人が見せた一瞬の微笑みに、その人が見せた謙遜な姿に、心の平安は得られる。心に平和が宿るとすれば合理主義を排除してからに違いない。