不合理

 「なんでだろう~なんでだろう~」あのくだらない芸人の耳障りな言葉が何回か頭に浮かんだ。
 四国汽船の玉野(宇野)のチケット発売所で、高松まで行きたいと言うと、直島までしか売れないと言う。以前四国フェリーが動いていた時には、玉野から高松まで直行だった。それが廃止され直島経由で四国汽船を利用して高松まで行けることを知ったから、楽しみにしていたフェリーでの高松行だ。直島から高松に行くには直島の発売所で切符を買わなければならないと教えてくれた。
 疑問Ⅰ・・・どうして、わざわざ2回に分けて切符を買わなければならないのか?
 宇野港から直島港までは20分で行ける。それはそうだろう目の前に浮かんでいる大きな島なのだから。出向して間もなく、到着のアナウンスが流れた。忘れ物がないように、車は人が下りてからというようなよくあるアナウンスだった。
 インターネットで下調べしていて、直島港での乗り換え時間は10分だった。そこで急いで発売所を探し、チケットを買って桟橋まで戻った。発売所が1分くらいの距離の上に、他の客も少なかったので十分余裕はあった。
 フェリー乗り場に戻って乗り換えの船を探すと他にフェリーはない。そしてふと今下りたフェリーの正面を見てみると、宇野-直島-高松フェリーと大きく書いてある。
なんと、今降ろされたフェリーがそのまま高松に行くのだ。狐のつままれたようにまた乗り込んだ。
 栗林公園で紅葉を楽しんだ?のち、午後3時半のフェリーで帰路についた。ところがまた直島でいったん降ろされチケットを買わされた。そこでさすがに僕も不合理だと思ったので、というのは同行の女性たちが大荷物だったので、せめて荷物だけはここに置いていてもいいか尋ねた。すると世話係のおばちゃんが原則それは出来ないと答えた。でもおそらく直島の住人だろうおばちゃんは、気の毒がって目をつむってくれるようなことを言ってくれた。そしてどうしてこんな不合理なことをするのと重ねて尋ねると、このフェリーは直島住民の生活のためのものであって、観光のためのものではないらしいのだ。それですべて合点がいった。直島のチケット売り場で直島住民ですかと尋ねられたのはそのせいだと理解できた。
 これでこの摩訶不思議な仕組みが理解できた。そこでおばちゃんに、「ご自分に迷惑はかけられないから、ルールを守っていったん降りてまた戻ってきますね」と言って大荷物(写真撮影用のアオザイ)を持って降りた。
 単なる娯楽の僕が、生活者のルールを非難なんかできない。郷に入っては郷に従うのも一つの快感。人に話せば楽しんでいただけるような興味深い体験だった。

 

https://www.youtube.com/watch?v=0WU_gxT41vA