尊厳

 子供のトラブルを治すのに親がついて来る、或いは連れてくる場合が多い。僕は、子供が持って産まれた病気について親を責めているのを見たことがない。薬局だから命に関わる病気の人などは来ない。しかし、かなりのハンディーを持った子は来る。しかし、子供たちの誰一人、勿論成人している子供たちも含めて、自分のハンディーを親のせいにしたりはしない。ハンディー自体が、もの心ついた頃から体の一部だから、自分と一体化してしまっているのだろうか。親を責めても恨んでも解決出来るものでないと達観しているのか。いやいやそんな凡人の考えることではなく、もっと深い神の領域にまで達しないと理解できない真理か。  逆に親はいつも自分を責めている。口に出すか出さないかの違いはあるが、多くの方は自分を責めている。母親は特にそうだ。母親を演じている父親もその傾向がある。親は出来ることなら自分と替わってやりたいと思っている。我が子が不憫で不憫で仕方ないのだ。親は心の中でいつも子供に許しをこうているのだ。  健康、容姿、知能、定めを知っているのか、子供は親を責めない。だからこそ憐れなのだ。人間の尊厳なのかもしれない。あまりにもつまらない世の中の出来事がいくら束になって襲いかかっても、この尊厳の前ではひれ伏すだろう。