クリは老犬でモコはまだ幼い。クリは焼肉やさんで赤ちゃんの時もらってきた。モコは息子がアパートで飼えなくなって、仕方なく我が家にやってきた。元々犬は嫌いだったが、子供達のお蔭で今は犬の可愛さがよく分かる。可愛さだけでなく、考えていることすらおおむね分かり出した。犬は群れをなす性質があるのか、家族の中で僕を長と思っていてくれるらしくて、僕をたててくれる。  我が家には庭がないので、駐車場に紐でくくって10数年。よく我慢してくれたと思う。北海道の牧場や沖縄の海辺なら放し飼いにされ自由に動き回れる環境もあるだろうが、なかなかこの辺りでは放し飼いは出来ない。散歩に行く時以外は紐で柱にくくられて、1日寝ている。たまに通る人に吼えたり愛想をするが、ほとんど生活に変化はない。よくそれでストレスがたまらないなあと思うし、くくりっぱなしを悪いなあとも思う。こんなことを考えるのはもう2匹をを擬人化しているのかもしれない。夜になると家の中にいれてやる。臆病な2匹は狸にも怯えて吼えまくる。子供の時、犬に噛まれた経験があるので、犬が狸に怯えるなんて想像も出来なかった。なによりも強いものだと思っていた。今僕の前でおなかを見せる2匹の従順さが哀れに思えてくる。  何よりも価値があると思える自由を奪っている。たった、一日2食のドッグフードと引き換えに。現代の誰かに似ていないか。