身の丈

 生活がすさんで、一気に駆け下りていく人を見た。酒と博打で身を持ち崩し、家族に捨てられ仲間に捨てられ、世間に捨てられる。テレビドラマを再現しているかのような光景が、体温を感じられるようなところで進行する。道徳の欠如は、病気の範疇に入るのではないかと考えさせられる。誠実も病気の前では歪に響く。心の交通はアルコールや、博打で侵された頭では出来ない。  手を差し伸べる理由が欲しい。個人の努力では乗り越えることが出来なかったと証明して欲しい。社会が悪かったでもいいし、病気がちだったでもいい、いやいや運が悪かったでもいい。しかし、人が働いている時間に酒を飲み賭け事に現を抜かしていたでは、心は動かない。  身の丈を知れと言われる。その人も自身の身の丈を知らなかったのだろう。では身の丈は何で量る。お金か、肩書か、友人の数か、読んだ本の数か。  身の丈がどんどん縮んでいる。身の丈に合わせたら出来ることがなくなっていく。身の丈を量る新しい尺度が欲しい。年と共に擦り減る身の丈でなく、経験と知恵を積み重ねた身の丈の。