アナログ

 今日、ある製薬会社のセールスがきて、資料をメールで送りますからアドレスを教えて下さいと頼まれた。僕はアドレスを調べるのが面倒だったので、FAXで送ってと言った。すると彼は、不思議そうな顔をして、先生はITが好きそうで何でも取り入れているように見えるのですが不思議ですねと言った。僕は、彼がそんなふうに察した方が不思議に思えた。僕は完全なアナログで、今多くの方があたかも必需品のように使いこなしているもののほとんどを持っていないか、持っていても自分で使うことはできない。今現在使用しているこのパソコンも、ただひたすら指1本で、文字を打ち込んでいるだけだ。僕にとってはワープロの延長でしかない。  携帯電話も持ったことがないし、人に借りる時にはいちいち使用方法を尋ねなければならない。持ったことがないから、便利そうにも思えないし、24時間連絡OKなんて耐えられそうにない。どんなに便利でも一人で過ごす時間を侵略されたくはない。  最近煎じ薬を作る患者さんが増えた。便利だから、エキスの粉薬を多用していたが、患者さんが意外と煎じることを面倒がらないのだ。これは僕にとっては大きな発見だった。コーヒーだって、インスタントより豆をすりつぶして飲むほうが数段美味しい。薬草だって同じことだ。クツクツと煮て成分を出したほうが濃いものが出て効果も高い。ITの時代に似合わないかもしれないが、本来動物としてある人間にとって自然なのは薬草の方で、電磁波ではない。必需品と思っているものが実は、人間にとってどのくらい害があるのか、自然からどのくらい遊離しているのか検証を欠かしてはいけない。