距離感

 心配していたが、今日その姿を見て安心した。
 1週間前から、僕がテニスコートを朝の8時半から何度も周回するのを知っているかのように、先回りして来ていた。1度か2度は僕の方が早かったこともあるように思えるが、どこかに隠れていたのだろう、1周して審判台のところに帰ってくると、ちゃっかり台と防護ネットの間のコンクリートの上で待っていた。
 とにかく綺麗だ。少しふくよかだが小顔で足は細い。意外と度胸が据わっているのか、好奇心が強いのか、僕が近づいても恐れない。かといって図々しく自分から近づいてくるわけではない。微妙な距離感で僕たちは1週間、同じ空気を吸い、同じ光を浴びた。
 空では鳥たちが歌い、風も時に騒ぐ。春を呼ぶように陽光は降り注ぎ、心と体を温めてくれる。何のために現れるようになったのだろう。何を求めているのだろう。いやいや僕に何をくれようとしているのだろう。
 僕はその存在だけでいい。時に背を向け、時に目を合わせてくれるが、僕が1周するのをじっと待っていてくれる。気持ちは通じている。僕にはそう思えて仕方ないのだ。昨日の朝、姿が見えなかったので心配したが、今日はしっかり現れてくれた。もっといでたちの緑が深くなれば、もっと美しくなる。いつまで会い続けることができるのか分からないが、孤高のメジロさんに感謝!メジロくんかな?