ライブハウス

 N響のトランペット奏者がジャズのバンドを作っていて、そのライブがあるからと誘いを受け、法務省に2度も出張したジャズ大好き人間を連れて土曜日の夜、岡山市にあるライブハウス(MOGLA)に聴きに行った。数曲聴いた後、なんとなく主催者に尋ねてみた。「これってジャズ?」主催者も、「ジャズと言うより、ヒュージョンかな?」と答えた。ジャズ大好き人間を連れて行ったのだが、ジャズではなかったので、彼はどんな反応を示すだろうと思っていたら、さすがに耳が肥えているらしくて、トランペットの柔らかい音をしきりに褒めていた。僕はギターのテクニックに圧倒されていたが、日本には恐らく僕らが知らないすごい音楽家がいるのだろうなと想像した。  そもそも伏線は店内に入ったときからあった。ジャズのライブにしては若い客がほとんどだったのだ。確かに僕たちより年上の人も散見されたが、ほとんどが20代から30代あたりに集中していた。若い人でもジャズを聴く人は多いんだと、勝手に解釈していた。好きなジャンルだったら4000円のチケットなんて意に介せないんだとも思った。僕はあの年齢で、4000円を払って音楽を聴きにいくかと問われれば、NOだ。  ラテン音楽など一部の曲で激しくリズムを打ったが、おおむねおとなしい音楽だった。夜空のトランペットを始め3曲だけ知っている曲だったが、オリジナルが多くて、気持ちが入りきらなかったことは否めない。ただその上手さに圧倒され、トランペットも、ギターも、ベースもいい音が出るものだと、プロの実力に感嘆した。一言で言うと、上品なメンバーによる上品な曲を、上品な観客とともに楽しんだと言うことに尽きる。  驚いたことに、昨夜のコンサートを企画したのは、誘ってくれた人そのものだったのだ。彼がトランペットを吹いている方の指導を受けていることは知っていたが、彼もまたひとりの聴衆かと思っていたら、彼自身が企画したらしい。建設会社の社長でありながら、その風貌からとても音楽など分からないように見えるが、トランペットもギターもたしなめる人物で、福祉関係の会社も経営していて忙しいはずなのに、これだけのことをこなしやり遂げたことに驚くとともに感心した。僕にとってはむしろその事の方が演奏よりも驚きだった。見るからに活動的な人だが、動いていくらに生まれついているらしくて、好奇心も行動力も旺盛だ。夕食時間と重なると言う理由で全員にカツサンドを振舞っていたが、御法度の裏街道を歩くような顔をしてよくも気がつくものだと、おどろ・・・あきれた。  何十年ぶりに「ライブハウス」とやらに入ったが、場違いな感じは受けなかった。音楽を楽しむことに年齢のハンディーはないものだと、若い客を見ながら思った。