交換神経

 今週も息絶え絶えに乗りきった。少しだけ薬剤師さんが来てくれるようになったので、少しは以前の栄町ヤマト薬局に帰ったかもしれないが、まだまだ岸は遠い。実力がない分、笑いの一つでもお土産にして、交感神経優位の攻撃的日常を瞬時でも忘れてもらえるように心がけていたが、当の僕自身が全くの交感神経優位に陥ってしまって笑いなどトンと聞かれなくなった。こんな僕と知らずに今日も幾人かの方が、それも初めての相談の方も来てくれた。長い間の苦しみを解放されたくて来てくれた。四国の方の紹介できてくれた。こんな僕でも、少しのお役に立ちたい。少しでも今ある苦しみから開放してあげたい。  願わくば、1か月前の僕にもどして欲しい。患者さんと一緒に考え、一緒に努力出来る僕にもどして欲しい。さもないと僕の存在理由などなくなってしまう。この1ヶ月、僕がお相手した方、相手できなかった方、全ての人に許して欲しい。僕は朝から晩まで機械になっていた。薬を作る無機質な機械だ。僕は機械のまま人間に戻らないまま、皆さんの前に立っていた。  胃壁が破れるほどのめりこんで、それでも効かなければ仕方ない。諦められるまで関わって諦めたい。カラスに起こされて薬を作り、判断力を失う時間まで調在室に立てこもって薬を作りつづけた。なれない僕が作った薬を、特別養護老人ホームのお年寄りが飲んでくれる。顔も見たことがない100人分の薬に胃が痛くなる程の心をこめられない。病院の処方箋を持ってきてくれた人達、僕の調剤はどうだった。僕の説明はどうだった。僕に真心を感じてくれたか。漢方薬をわざわざ遠くから取りに来てくれた人達、僕の誠意は感じてくれたか。心は緩んで帰れたか。  ここ3週間、1日17時間働く機械になっていた。その唯一の褒美は、今夜の「チャングムの誓い」漢方の勉強にもなる。そしてなによりも人恋しくなる。僕の力で少しでも改善できるまだ見ぬ人達が恋しくなる。そんな力を僕はもらう。僕と薬を接点として、つながっている全ての方に伝えたい。「もう少し待って、もう少し経てば僕は以前の僕に帰ることが出来るから」そして多くの心配の声や励ましの声を下さった方、ありがとう。僕が想っている以上に僕のことを思ってくださってとても感激している。この感激を何で返せばいいのだろう。薬の効果か、悲しい時、辛い時の話し相手か。