引き算

 いつも暇で困っているのに、なんで今日に限って忙しいのだろうと、昼食をとろうとして気が付いた。いつも昼食をとる時間より1時間半も遅かったのに。
 いつも2時にテレビを見ながら昼食をとるのだが、今日はどの局も台風のニュースばかりやっていた。行きかう人々にインタビューをしていたが、予定を1日早めて故郷を後にするとか、旅行を切り上げて東京に帰るとか、同じような答えが多かった。そこではたと気が付いた。今日は多くの方にとっては「連休明け」なのだと。公務員もそうだが、普段通りに仕事をしている人間にとっては、盆は連休ではない。だから1週間、あるいはそれ以上連続で休める人たちのことは、頭から抜け落ちていた。
 もちろん連休の途中の人もまだまだ多いみたいだが、恐らく何割かの方々は、今日は連休明けだったに違いない。薬局は、公立病院の処方箋を受けなければならないから、盆に休むと言う経験がない。だからついうっかりして「なんで今日に限って忙しんだ」と間が抜けたことを考えていたのだ。
 働くことが苦でない僕は、休みなど無くてもいいのだが、ただ現代ではそれは許されない。納得できなくても時代に合わせなくてはならない。そうしないと後継者などできるはずがない。働き方改革が、頼ってきてくださる方々には不便なことが多いが、そもそも働く人がいなくなっては身も蓋もない。
 僕も、時代の流れに次第に乗れなくなり、頭では分かっても体がついて行かない。いや、むしろ頭で理解できないことが増えている。だから捨てなければならない価値観も、捨てられないでいる。今や、ほとんどの能力が引き算なのに、圧倒的に難しいのは、価値観の引き算だ。

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