度胸

 何でも口に出して、それらしい人には尋ねてみるものだ。
 一昨日の、例の摩訶不思議なパソコン上の出来事。大切なメールが直接ごみ箱に入ってしまうのだから、手に負えない。僕がこうしたときに頼りにしているのが、漢方問屋の専務さん。そして税理士事務所でパソコンの腕を買われて働いているMさん。今までこの二人で解決できなかったことはない。
 無駄な作業でも、折角頂いたメールを見落としてはいけないので、一昨日からごみ箱の中も丁寧に見ることにしている。なんともはや能率が悪いが仕方がない。
 そんな中、ふと専務さんが訪ねてきてくれた。時にこうして覗くことはあるけれど、ドンピシャのタイミングでやって来てくれたから、困っている内容を伝えた。すると彼もこういったことはあまり経験がないのか、その故障?を検索してくれた。サンダーバードで嘗てはあったみたいだが、直近の例でも随分と昔のことだ。
 その検索結果が腑に落ちなかったのか、直接Mさんに電話をしてくれた。説明もそんなに長くしていなかったと思うが、すぐに理解できたのか、クイックアシスト機能を使って二人で修復してくれた。本当に数分と言う短い時間で回復してくれた。
 結局僕が、何かに「触ってしまった」と言うのがMさんの見立てだったが、僕は触ったら機能を失ってしまうようなところを開く能力もない。それは専務さんもよくわかっていて、「そうですよね」と不思議がっていた。
 何はともあれ、明日からは3つあるアドレスのごみ箱をあさる必要はなくなった。それにしても「どうして3つもアドレスがあるんですか?」と専務さんがこれまた不思議がっていたが、僕もその理由を知らない。少なくとも僕にはそうした能力はないから、誰かが作ってくれたのだろうが、この世界の僕の遅れ具合はもう取り返しがつかない所に来ている。人と人とのつながりを、電子機器などに任せるのがいやで、生身を大切にしてきたが、不都合を解決するのに人の手を煩わせることが多くなった。自分の価値観優先で人様に助けられる。度胸を付けるか図々しくなるかしか、価値観は守れない。

France Gall - Poupée de cire, poupée de son (1965) Stéréo HQ - YouTube