肌感覚

 「人新世の『資本論』」で知られる東京大准教授の斎藤幸平さん(37)が一昨日毎日新聞に投稿していた文章は、素人が長年肌感覚で積み上げてきた考え方を裏付けてくれるものだった。2600字に及ぶ文章だから、素人が要約するようなことはできないが、ここぞというポイント、腑に落ちるポイントを書き写してみたい。素人が読みながら思わず「同感」と叫んだところだ。
 東京自体は別に暮らしやすい場所ではないと、私も22年から久しぶりに住んで実感しています。それでも、そこに仕事があり、お金があるので人々が吸い寄せられてきます。一方、家賃や物価も高く、周りからのサポートも得難い。東京都の合計特殊出生率は1.04と全国で一番低いわけです。
 僕が東京に最後に行ったのは、先輩の結婚式だったから、50年近く前だろう。東京と言っても、結婚式場に行っただけで、式がすんだらすぐ千葉にいる姉に会いに行って、翌日には帰ったような気がする。年末などテレビによく出てくる商店街を歩いていた時に、店舗から身を乗り出して何かを手に口上を言っていた威勢のいいおじさんに「この貧乏人!」と言われたのを覚えている。それが最後の東京での記憶だ。
 以来、行く用事もなかったし、行きたいとも思わなかったから、実感で東京を語ることはできない。ただそれは僕の人生で何の意味もない。機能としての東京はさすがにこの国のどこにいても影響力はすごいが、空間としては全く意味を持たない。東京が北海道にあろうが、東北にあろうが、どこにあっても同じだ。もっと言えば東京がネットの中に詰め込まれていても機能するような気がする。
 直下型地震がもうすぐやって来る。もっとも東京らしい「機能」を是非ネットの空間に完全に保管しておいてほしい。

France Gall - Poupée de cire, poupée de son (1965) Stéréo HQ - YouTube