治療効果

学術会議の専門家が書いているのだから信憑性はある。僕の実感とも重なる。  超高齢社会の認知症患者の介護や医療を支える働き盛りの世代のうつ病が増えている。自殺や長期休職が社会問題化している。60年前から抗精神病薬や抗ウツ薬が登場し、新薬が次々と開発されているが、実はそれらの薬が効かない人が3~4割いる。最近10年間は、うつ病でも認知症でも新薬開発がことごとく失敗し、欧米の大手製薬企業は撤退し始めている。  道理で僕のところにも沢山心のトラブルの人が来るはずだ。300数十万人の患者の内、100数十万人が全く効かない薬を飲まされているのだからたまらない。患者さんが何か異なる治療方法を探すはずだ。そんな人を、その道の素人がお世話をするのにいつも後ろめたさがあり、何となく気が引けるのだが、効果が結構あり喜んでいただける場合が多いので、躊躇いながらも努力している。僕は、なるべく自然な薬(漢方薬)で自然な環境の中で自然な人間関係の下で治ってくれたらいいなと思っている。だから僕に出来ることとして漢方薬の知識を駆使すること、人間関係を水平にすることを心がけている。  診断は受けていなくても、大なり小なりこのジャンルのトラブルは多くの人が持っていると思う。現代のように分類が急に増えたら入らないほうが不思議だ。僕だって当てはまるものが数個ある。素質は十分あると思う。ただ何かで、僕は治療をされる側に入らなくてすんでいるのだと思う。心を患う人の条件などを見ていても「あたっている」と思うことが多いのに、今だあちら側に行っていない。その何かで、立ち居地が違ってくるのではないか。言い古されたように、生きがいとか家族とか友情とか、色々な要素があるのだろうが、僕が自分で感じていることは、長年、薬剤師を続けてきたことではないかと思う。それも処方箋調剤ではなく、OTC(オーバーザカウンター)の薬剤師を。  OTC薬局、言い換えれば昔ながらの薬局は、頼ってくる方の問題を解決しなければならないのだ。実力があろうがなかろうが、目の前の問題を解決する職業なのだ。医者ほど専門的な勉強をしていないのに、ある程度の病気のお世話をしなければならない。そうした延々とした日常の業務が、こちら側にいさせてくれる要因ではないかと思っている。すなわち、ほとんどの時間、他人様のために懸命に答えを出そうと頑張っているのだ。自分はおおむね後回しなのだ。このことが生きる原動力に無意識の内になっているのだと思う。いわばテーマが自分に向かう時間が極めて制限されるって事だ。  思考力を落とし、積極性をそぎ、そんな薬が心のトラブルを解消するのだろうか。頭の回転が鈍り、消極的になる、これって、治療効果?