経験


 珍しい経験をした。
 ある方が癌の漢方薬を希望してやってこられた。あまり深刻なトラブルは薬局には荷が重いから、僕はなるべくそういったものを標榜しない。薬局には薬局の守備範囲があり、越えてはならない見えない境界線はある。
 ただ、何十年も漢方薬の勉強をしていると、先人がその種の処方も教えてくださって、やむなくお手伝いすることもある。この方も1年前にそうした方だ。ただ数回漢方薬を取りに来たあとぴたりと止まっていた。
 久しぶりに来られたのだが今回は、専門中の専門の方の勧めで来られた。総合病院にかかっている患者さんだが、主治医の先生に漢方薬を勧められたから来たというのだ。理由は抗がん剤の治療に耐えられないだろうから、もうこれ以上治療は出来ないと言われたらしい。
 専門医だから漢方薬についての知識はないだろうから、同じ病院の漢方薬を日常的に扱っている先生に紹介してもいいものを、どうして外部の、それも田舎の薬局に返してきたのだろう。答えは分かっている。
 漢方薬の良いところは「元気にする」ことができること。細胞をたたくということはできないかもしれないが、消化器系を強くし、おいしく食事をし元気になれば、自然治癒力が増す。そうしたところをお医者さんが期待してくれているなら、僕は懸命に応え様と思う。ましてご本人に久しぶりにお会いして、当時の普通の人と変わらないくらいの元気さを失っている姿を見れば、僕の知識などというレベルではなく、生薬の持っている力に僕自身がすがりたいと思った。
 安易にツムラ漢方薬を処方せずに、田舎の薬局の煎じ薬を勧めてくれたことに感謝しながら、奇跡を起こしたいと思った。

 

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