鎮静剤

 「人新世の『資本論』」で知られる東京大准教授の斎藤幸平さん(37)の文章を読んで・・・

 田舎に暮らして、都会の生活など全く知らない僕にとって、ニュースなどで放映される光景を見ていたら、上から下まで金持ちでぜいたくな暮らしをしているように見えるが、実態は以下の文章にあるように、大金持ちの贅沢を支えるために、田舎から出てきた人たちが、東京生活と言う空虚な鎮静剤を打ちながら暮らしているのが実態だろう。
 深夜のスクランブル交差点を渡る人たちは、富の象徴ではなく、鎮静剤なくては暮らせない人々の葬列なのだろう。斎藤准教授の言う、資本主義の一極集中がもたらす失敗の葬列だ。
 翻って僕はまさに3層構造の一番外の部分、所謂過疎化していく地方そのもので暮らしている。もっと言えば4層構造と言ってもいいような、過疎化する地方都市のまた地方だ。都市で暮らす人たちの必需品は何もない町だ。あるのは人間が生きていくために最も必要な産業。漁業と農業。
 仕事帰りの快楽はない。夜の7時はもう深夜だ。だけど仕事自体に「快」がある。潮風が町並みを抜け、畑の上で休む。金で買えるものには貧しくて、金で買えないものには富んだ町こそが、3層構造の外側に暮らす僕らの大いなる拠り所なのだ。

 

以下、斎藤幸平の文章

    東京自体は別に暮らしやすい場所ではないと、私も22年から久しぶりに住んで実感しています。それでも、そこに仕事があり、お金があるので人々が吸い寄せられてきます。一方、家賃や物価も高く、周りからのサポートも得難い。東京都の合計特殊出生率は1.04と全国で一番低いわけです。
 東京は人口を他の都市から吸い上げるけれど、それを食い潰すだけで次の世代が生まれてきません。自分達ではエネルギーも、食料も、何も作ることが出来ません。典型的な「収奪モデル」です。東京がどんどん発展することは、必ずしも日本全体が豊かになるということではありません。それが資本主義の一極集中がもたらす失敗です。
 このままいくと東京の中心部だけは成長し、そこで暮らせる人達は一部の特権階級で、その周りに特権階級に仕えるようなサービス業の低賃金の人達がいて、その外には過疎化していく地方と言う3層構造になりかねません。

NHK日曜討論(2024年3月3日放送)長谷川ういこさんの発言切り抜き - YouTube