専門馬鹿

 こんなことも気が付かないのは、いかに僕が「専門馬鹿」かよくわかる。いや言葉遣いを間違った。生薬学で留年し、漢方理論を回避し、現場での体験だけを積み重ねてきた僕には、その言葉は不適切だ。正しくは、「専門も馬鹿」だ。
 これだけ暑くなると、ものの10分も草取りをやると、ゴム手袋の中は汗でびしょびしょになる。翌日使う時にもそのびしょびしょはかなり残っていて、スムーズに履くことも出来ない。手に手袋が引っ付いてしまう。そんなものだから脱いだ時の臭いたるや凄くて、汗とゴムの競演はインパクトがある。
 そこで僕が考えたのはさすがに薬局。シッカロールの使っていないのがあったので、履く前にゴム手の中にパラパラと撒く。これだと少しばかり履きやすくなるが、指の中にまでシッカロールが入って行かないので、履いた瞬間から湿っていて気持ち悪い。でもこれを1か月くらい続けた。僕にとっては最良の方法だったのだ。
 気温が急激にあがり出して、作業の後ゴム手を脱ぐのが一段と大変になった。ある朝、薬局を開ける時間間際まで作業をしていて慌てて脱ごうとしたが、くっ付いて脱げなかった。慌てた僕は裏返しに脱いでしまった。そしてエアコンの室外機の上に置いて閉店までそのままにしていた。
 仕事が終わって、ドッグランに行くためにそのゴム手に手を通すと、なんと気持ちよく、あたかも新品を降ろした時のような感覚で履くことが出来た。ああ、これが正解なんだと初めて気が付いた。太陽の力に勝るものはない。ゴムの中に隠れた水分と臭いを空気中に捨ててしまっている。なんでこんなことに気が付かなかったのだと後悔したが、考えてみればその種の動作をしなければならないような状況の中で過ごしたことがない。
 大学5年間、4畳半一間のアパートで過ごした。だから洗濯も自分でしていたはずだが「裏返し」というテクニックを使ったことがないような気がする。そもそも洗濯などと言うものを当時していたのかどうかも定かではない。ズボンは一つしか持っていなくて、破れるまで使った。Tシャツは2枚は持っていたのだろうか。
 誰でも簡単に思いつくことの体験がないのか、こんな簡単な答えに行きつくのにずいぶんと時間を要した。この歳になってすべてが新鮮。恥ずべきかな!

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