木偶の坊

 裏千家表千家か、亜流か我流か、池坊か木偶の坊か知らないが、沢山のミモザを娘がクレープショップのウッドデッキに飾っていた。傍らにはさみと新聞紙が用意してある。いやその上小さな籠も用意してある。
 何の為かと言うと、それをクレープを買いに来た人に買ってもらい、保護犬センターに寄付するらしい。ミモザは薬局の駐車場に作っている小さなガーデンの中に生えているから、元手はいらない。ただしそれでは申し訳ないので、ふだんショップで販売している気の利いたお菓子もつけたらしい。
 こんなものにお金を出してくれるのかと半信半疑だったが、1日で1万円近い寄付が集まった。
 それに気を良くして月曜日から薬局でも同じようにミモザを並べた。ところが滅茶苦茶目立つのに誰も興味を示さない。クレープ並びにドッグランと薬局との差をつくづく感じた。
 やはり前者は楽しげにやって来ている人たちで、好奇心も旺盛だ。後者は体調不良を抱えているから、花に興味を向けることも出来ないのだろう。そう精一杯なのだ。病院の処方箋を持ってくる人も、漢方薬を取りに来る人も、ミモザを愛でるほど余裕がないのだろう。美味しいものを食べに来る人、愛犬が嬉しそうに走り回る姿を見る人、心は今日の天気みたいに、暖かい日差しに照らされている。過ぎ去った寒気に支配されている人とは余裕が違う。
 どちらかと言うと陰に属するような仕事を続けてきたが、やっと陽に属する仕事の真似もできるようになった。漢方薬を勉強し、陰陽のバランスの大切さを日々説いているのに、自分には無関心だった。

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