傑作

 スマフォが普及して、その恩恵に実は僕も結構与っている。スマフォを持っていない僕が恩恵に与るとは「これ如何に?」だが、あることに特化して大きな恩恵に与っている。
 病院の処方箋調剤は時として時間がかかる。僕の薬局に処方箋を持ってくる人の多くは、門前薬局で待たされるのが嫌な人だ。また門前薬局内で長時間多くの患者と一緒にいることが耐えられない人も持ってくる。コロナのころは、特に後者の理由の方が多かった。
 待つことが苦手な人を待たすわけにはいかないから娘夫婦が頑張るわけだが、意外と最近は皆さんスマフォに夢中だから、イライラして待つ人は少ない。老人なら時間に余裕があるから待ってもらうことにそんなに抵抗はないが、若い人はそんなに余裕がないから、待たせるのは気が引けていた。だが、今は若い人にも気を遣うことが少なくなった。
 昨日処方箋を持って来た人が、珍しくスマフォを取り出さずに、視線を上げたまま待っていたから、僕は近づいて世間話を始めた。興味本位でスマフォを持っているかどうか確かめると「ガラケー」だと言っていた。持っていない理由を尋ねると必要ないと言うことで、そこは全く同感だ。そこで「待ち時間なんか困るじゃろう、イライラして」と尋ねるとやはりそうだった。手持無沙汰は僕も同じでよくわかる。そこで彼が病院で目撃する光景を教えてくれた。
 「病院の待合室でも、みんなこうじゃあ」と例のスマフォを打つ真似をして見せた。そして次の言葉が傑作だった。「若い奴は当たり前じゃけれど、ジジイもババアもみんな使っとる」
 さて、この男性、僕の姉と同級生で今年75歳になるはず。あんたは若い!

“Sound Of Silence” Pentatonix live stream at the Hollywood Bowl 2022 - YouTube