町民

 詳しい事情は分からないが、宇野から高松まで行くのに途中直島でいったん降りてまた乗船しなおす。今下りた船にまた乗るのだから初めての時はかなり抵抗があった。10分の間隔があるから、急いでという訳ではないが、切符も新たに直島で高松行きを買わなければならないから、慣れていない人間にとっては少し焦る。まして発券機で買うのは時間を食ってしまいそうなのでなんだか不安だ。
 運よく窓口販売もしていたから、窓口で高松までの往復を4枚注文した。すると受付の女性が「町民の方ですか?」と尋ねた。一瞬意味が分からなかったが、発券機でなぜか2種類の値段が出ていたのを見ていたので、恐らく生活の足として使っている地元の方と僕らみたいな旅行者は値段が違うのだろうと想像していた。ただ「町民の方ですか?」と言う問いかけは何か不自然で耳に残った。その後、栗林公園の紅葉を楽しんでいる間も何度か頭をよぎった。
 帰路で再び直島の降り立った時に引っかかっていたものの正体が分かった。
 玉野と目と鼻の先にある直島は、実は香川県なのだ。海上の県境は瀬戸内海のちょうど真ん中あたりではなく結構岡山県寄りにある。直島がどこかの市に属しているのか、今だ郡なのかよく知らないが、住民にとっては町と言うのが当然と言えば当然なのだ。何々市直島町、何々郡直島町のはずだから、いたって「町民」が普通なのだ。瀬戸内市牛窓町の僕が、牛窓町民を名乗るにと全く同じ理屈だ。ただ、部外者にとっては圧倒的に島の印象があるから町ではなく島だ。だから僕が切符を買う時には「島民の方ですか?」と尋ねられた方がしっくりと来ていたはすだ。
 同じものを見ても、中から見るのと外から見るとではこうまで違う。なんだか多くのことに当てはまりそうな気がする。

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