3階建

 牛窓唯一のリゾート型のマンションの1期生の方が、定期的にある天然薬を買い求めにやって来る。萎縮性胃炎で胃腸の調子も悪かったが、何よりも検診で先生に脅かされるばかりするから、何を思ってか田舎の薬局に相談に寄ったのが最初だ。もう20年くらい前だと思う。意外と根気よく飲み続けていて、胃腸の不快感もなくなったし、検診で先生に脅かされるのもなくなったみたいで全く話題に上らなくなった。
 今日その天然薬を取りに来た時に、最近健康の話を全くしないから調子を尋ねてみた。すると全く自覚症状がないばかりか、人間ドックで先生に同年代の人に比べたら恵まれ過ぎと言われるようになっているみたいだ。
 関西の都会の方で、仕事は関西で、週末は牛窓で過ごしている。いわば2重生活なのだが、マンションを買ってよかった?と尋ねてみた。すると笑顔で「そりゃあいいですわ、何せ景色と空気が違うから」と言われた。マンションの9階に住んでいるらしいから、眼下の海、眼前の島々、遠くは高松の屋島までくっきりと見えるから、確かにリゾートマンションだ。生活の場にしている人も多いが、都会を逃れて来る人も多い。
 人口40数万人の街の密集地に家があるから、隣と密着しているらしく、窓を開けたりしたものならエアコンの熱風を浴びるらしい。多くの家が3階建てだと言うくらい狭い土地に家をみなさん建てているらしい。聞けばかつては大工場地帯で社宅がいっぱい並んでいて、それを払い下げてもらったものだから自ずと狭小地になったらしい。上へ上へと空間を確保するしかないみたいだ。都市部でたまに見かける3階建て群の成り立ちが分かった。
 牛窓に来たら家々が離れているからびっくりしたらしく、マンションの下見の時点で即断即決したらしい。兵庫県の一つの市の中に、県庁所在地の岡山市に匹敵、いや鳥取県島根県の人口に迫るくらいの人間が暮らすのだから、そりゃあ息苦しいだろう。犯罪でも犯してやろうかと思っても不思議ではない。田舎者には考えられない。
 会社経営者と言う恵まれた境遇にあるから、活躍の場と休息の場の両方を持てるが、庶民には難しい。その市には釣りが出来る公園も整備されているみたいだが、黒い海では釣りは出来ないと言っていた。牛窓の海を見たらさもありなんだが、海だけではなくすべての自然が、恐らく、海の色と同じように、似て非なるものだと思う。

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