農家の方の腰痛の漢方薬を作る機会は多い。膝の痛みなどを含めて、痛みの漢方調剤を鍛えてくれたのは、そういった方々だ。
 ただし実際の仕事ぶりについて詳しく知っているわけではない。ある方に仕事中の姿勢を注意したら、そんな姿勢をとることは不可能だと言われた。それはそうだろう、水を張った田んぼの中で膝をつけと要求したのだから。
 この時期水田に水をはっている。車などで通りすがりに見ると緑の絨毯がはるか遠くまで連なりとてもきれいだ。ところが農家の方々には、一見綺麗に見える田んぼの中に生えた草取りの時期でもあるらしい。「草が生えているの?」超ピント外れの質問だったが、僕だけでなく多くの方が同じように考えているのではないか。
 あのきれいな田んぼの水の中に生えて、農家の方を困らせているのは、誰でも耳にしたことがある「稗」らしい。誰でもと言うのは当てはまらないか、貧乏の象徴と言うべき米の代役だ。日本では明治時代まで主食用として栽培されてきた歴史があるから、戦後の貧しさの中で耳にしたことがあるのだと思う。実際に食べたことはないが、小説の中か、映画の中か、人々の話の中で耳にしたのだろう。
 稗はイネ科だから米と親類だ。と言うことは米にいいものは稗にもよく、稗に悪いものは米にも悪いのだ。だから農薬を使うと米自体がやられてしまう。放っておくと米の栄養を取られて稗がより育つ。
 運の悪いことに、稗の根は株のようになってなかなか人の力では全部抜けきらない。実演してくれたのだが、鎌を水の中に入れ、株を切断するようにして切り分け、抜くそうだ。この作業をしておかないと翌年、大量繁殖してしまうらしい。手の抜けない大切な仕事らしい。
 その実演してくれた姿勢を見て、「こりゃあ、悪くなって当たり前じゃあ、僕には10分も出来ん」と即、降参した。縁あって、苦痛を抱えながら懸命に農作業に従事する方のお世話をするが、もともとは僕なんかよりはるかに肉体的に強い方ばかりで、ただ傷めているだけだ。弱いから傷めていない人と、強いから傷めた方、圧倒的に後者の方々が世の中のお役に立っている。

 

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