非人間

 養老先生がとても良いことを言っておられる。そのことを理解できるくらい僕も年齢を重ねたってことだろう。果たして若い時にその言葉を聞いて、心に響かせるだけの準備ができていただろうか。おそらく小惑星のように通り過ぎただけだろう。
 先生は、いじめで自殺すると言うことがにわかには信じがたいみたいだ。人はどんなにつらいことがあっても「幸せ体験」を持っていたら、自分で人生を終わらせるようなことはしないと言われる。子供の時に楽しいことを経験していたら、生きていたらまたあのようなことがあると考えるから、命を自分で絶つようなことはしないと言われる。だから命を絶つ人は、つらいことばかりの人生だったと推測できる。
 先生がある小さな講演の時に、参加している若者たちに今幸せかどうか尋ねた。すると全員が幸せと答えた。その理由は、いい友人に恵まれている。いい家族がいる。欠点を指摘してくれるような人がいる。模範となるような上司がいる・・・などなど。それを聞いていた先生は、それが問題だと言われた。幸せの基準が全員「対人関係」なのだ。今対人関係で悩んでいないから幸せだけの話なのだ。だからそれが崩れた瞬間、人は奈落の底に突き落とされ立ち上がれなくなってしまう。その時に、自然を愛でたり、ペットと遊んだりすることが出来れば、人間として傷つくようなことはない。人間と非人間の世界を持っていないことの脆弱性を指摘されていた。
 その講演を見ていて僕はすぐに自分のある変化のことを思った。それはこの数年、やたら鳥の飛ぶ姿や、鳴き声、空の青さ、雲の形や流れる速さ、名前も知らない星座達、飼い主を引っ張る犬たち、道路を横切る猫たちのことが気になるのだ。そしてそれらを見たり聞いたりするのがとても楽しいのだ。青年期や壮年期では決してなかったことだ。
 意図してそうなったのではない。知らぬ間にそうなった。おそらく自然にそうしたことに興味を寄せ、自分の中でバランスをとっていたのだろう。自分の中で反乱がおこるのを防いでいたのだ。
 僕ら凡人はそうした現象を言葉で表現することはできない。ただ体感はできる。体で感じることはできる。体の外にも内にも自然は存在すると。

 

 


“文通費問題の火付け役” 維新新人・池下卓議員に違法献金の疑い
 日本維新の会の池下卓衆院議員(46)が、自身の父親から地元事務所の無償提供を受けているにもかかわらず、政治資金収支報告書に記載していないことが「週刊文春」の取材でわかった。政治資金規正法違反(不記載)の疑いがある。さらに、この不記載は、父親から個人献金の上限を超えた寄附となる可能性が高く、別の政治資金規正法違反(同一の者に対する寄附の制限)の疑いもある。
2011年から大阪府議を3期11年務めた池下氏。昨年10月の衆院選大阪10区から出馬し、初当選を果たした。「下馬評では、立憲民主党辻元清美氏が優勢でしたが、人気者の吉村洋文府知事も応援に駆け付け、小選挙区で勝利。辻元氏に比例復活も許しませんでした」(府政担当記者)
当選直後からNHK日曜討論」に出演。「任期1日で100万円出る。世間の常識では考えられない」などと述べ、いわゆる文書通信費問題の火付け役になった。
その池下氏の政治団体「池下卓後援会」の収支報告書によれば、元高槻市議会議長の父・節夫氏が2017年から2020年にかけ、個人献金の上限額である150万円を毎年寄附。さらに、池下氏は池下卓後援会や、自身が代表の政党支部日本維新の会高槻三島支部」の事務所を、節夫氏が所有する自宅敷地内(土地の一部は池下氏の母が所有)に置いてきた。
「節夫氏の市議時代からスピーカーなど選挙グッズが置かれ、10名ほどの会合もできる事務所です」(地元関係者)周辺相場を考えると、家賃は月4~5万円程度と見られる。ところが、府議時代の池下卓後援会の収支報告書には家賃名目の支出が見当たらない。
政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。
「事務所の無償提供を受けた場合、賃料相当分を時価換算して収支報告書に記載する義務がある。記載がなければ、政治資金規正法違反(不記載)になります」さらに、これを記載して修正したとしても別の問題が生じる。無償提供されているのなら、すでに上限一杯に寄附している父親から、さらに概算で50~60万円相当の寄附を受けたことになるからだ。
「上限を超えた寄附は政治資金規正法違反(同一の者に対する寄附の制限)になる。寄附側と受け取った側の双方が1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処され、上限を超えた金額の部分は没収になります」(同前)
記者の指摘に池下氏は「なるほど、なるほど」
 池下氏に話を聞いた。
――事務所は無償提供?
「そうですね、はい」
――収支報告書に不記載だ。
「そうですね……。一遍調べないといけないすね」
――家賃分を含めると、父親からの献金が上限を超した“違法献金”になる。
「ああ、そうか、そうか……。なるほど、なるほど」
――訂正の必要は?
「あかんもんであれば、修正すべきじゃないかと」
政治とカネの透明化を掲げる維新の会が、所属議員の政治資金問題に対し、どのような対応を取るのか注目される。