踏切

 ここは通りたくない。いくら法律を守って一旦停止しても下り方向は50メートル、上り方向に至っては15メートルくらいしか見通せないのだから。下り方向は小さな川にかかった鉄橋で、登り方向は店舗と倉庫に挟まれている。そしてどちらの方向も騒音防止か何か知らないが鉄の板がまるで塀のように詰めて立てられている。
 単線だから線路は1本で、1秒もあれば渡ることはできるが、視界が広がる上下65メートルで列車を発見しても避けられないだろう。横から衝突され一瞬にして人生を終えるだろう。型通りに皆一時停止はしているが、信号機を頼りに踏切を渡っているに過ぎない。もし踏切が故障していたら・・・とめったに通らない僕など考えてしまうが、皆さん慣れているのだろうか。入口をガソリンの炎で封鎖されるように、遮断機が下りないような不測のことが起こったらと気になって仕方ない。
 もっと北のほうに行けば恐らく踏切を渡ることなく目的地に行けるのだろうが、その道は国道だから、今回通った田舎道のようにノンストップで着くことは難しい。何を基準にするべきか迷うが、電車とぶつかることを避けるべきか、普通の交通事故を避けるべきか。
 恐らく何ら法律的には抜かりのないこと。ただし、その杓子定規に奪われる命があってはならない。
 のどかな正月のある日。畑を焼く煙に時に視界を奪われながらも、心を弛緩させられた小一時間。その踏切では一転、極度の緊張。今年を占うなかれ。

 

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