変貌

 短いテレビニュースだったが、おそらく彼は50年近く前に塾で教えた子の現在の姿だろう。
 民法の芸NO人の露出の多さにうんざりしているから、NHKのローカルニュースを見ていてた。すると、岐阜の鵜匠が登場した。何でも鵜にも何か予防接種をするらしくて、コロナのワクチン?と言う興味と、岐阜と言う地名で瞬時に引き付けられた。
 そして一瞬にして蘇ったのは、学生の頃塾で教えていた子の中に鵜匠の孫が二人いたことだ。二人は兄弟で確か年子だったと思うが、よく兄弟げんかをしていた。二人とも体格が良くて、当時僕などと同じくらい背丈があり、横幅は栄養失調の僕などよりはるかにあった。
 二人はとても勉強熱心・・・ではなく、中学生なのにタバコを吸っていた。僕は貧乏学生だからよく彼らにタバコを恵んでもらっていた。塾の先生としては日本一お粗末だった僕だが、なぜか劣等生にはもてて、彼らがより落ちていくのを防ぐ役割はになえていたように思う。
 ファッションではなく本当に破れたジーパン、何日も洗わない(洗えない)Tシャツ、4年間切ったことがない髪の毛、臭い運動靴。経済的に恵まれていた中学生には衝撃的だったかもしれないが、未知との遭遇が青春前期にあってもいいだろう。
 ニュースには、鵜の首をつかんでかごから取り出し、獣医のところに連れてくる鵜匠が映っていて、インタビューに答えた時に字幕で名前が出た。その名前を見た時、50年前に教えた兄弟のどちらかだと気が付いた。ただし、面影は全くない。白髪の壮年だったから当然と言えば当然だが、かつてを思い浮かばせるものはほんの一瞬の映像ではなかった。
 親子が離れ離れになり、何十年後かに再会する。ドラマでも現実世界でもあることだ。だが僕の今朝の経験で、子供の成長した後はかなりわかりにくいと思う。
 かつて教えた子と画面上の再会を喜ぶほど僕はセンチメンタルではい。その変貌ぶりを見せつけられた稀有な体験が、エキサイティングだったのだ。

 

https://www.youtube.com/watch?v=ev_a2sR5XNE